September 21, 2025

Globiance事件の一考察

- XDCに突きつけられたKYCとガバナンスの課題 -

Created by CoinCowTeam

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はじめに

Globiance(グロビアンス)は、仮想通貨取引所であり、法定通貨(フィアット)と暗号資産を統合的に扱うプラットフォームとして、主にXDC Network(XDC)などのトークンを取り扱ってきました。2019年頃に設立され、独自トークンGBEXの発行や銀行ライセンスを主張するなど、金融機関に近い存在として宣伝されてきましたが、2024年秋から2025年にかけて、ユーザー資金の凍結や出金不能といった深刻なトラブルが表面化し、これが「Globiance事件」として知られるようになりました。

資産のロックは数ヶ月から1年以上に及び、プラットフォームの不透明な運用も重なって、詐欺疑惑や集団訴訟の動きを呼び起こしています。 とりわけ、GlobianceにXDCを預けた大半の投資家が「XDCマスターノードにステークする」という目的で資産を託していたにもかかわらず引き出せなくなり、今なお深刻な影響を受けている点が最大の問題です。

Globiance側は「返金は開始済み」「毎月ユーザーグループに処理」「割合のみ開示」と発表していますが、具体的な数字や取引ハッシュといった裏付けは示されず、チーム紹介ページの削除も不信感を増幅させています。

なお、2025年9月24日時点では返金バッチの進捗が報告されていますが、具体的な数値や取引履歴といった検証可能な情報は提示されておらず、依然として透明性には大きな課題が残されています。

こうした事態は投資家心理にも少なからず影響を与え、XDC購入に慎重な姿勢を示す声も出ています。さらに、GlobianceからXDCを引き出せない状況が売買の難しさを生み、流動性の減少も相まって、結果的にエコシステム全体への影響も無視できません。

一見すると取引所の経営トラブルに過ぎないように見えます。しかし実際には、多くの投資家がXDCマスターノードの報酬を得る目的で自らのXDCを預けていたため、その影響は単なる取引所の範囲を超えていました。投資家の怒りや失望は当初こそGlobianceに向けられましたが、やがて「なぜこのような事態を防げなかったのか」という疑念は、マスターノードにKYCを課すという制度設計を含む、XDCネットワークのガバナンスそのものにまで及ぶことになったのです。

本稿では便宜上この一連の出来事を「Globiance事件」と呼び、その背景を整理しながら、XDCが直面する課題について考察します。

なお、本稿には筆者の当事者としての経験に基づく考察も含みます。私は実際にGlobianceに1000万XDC以上をステーキングしており、資金凍結の影響を受けています。この点については、2025年5月12日にX(旧Twitter)で投稿した内容「Globianceの公式アナウンスを受けて 〜 一投資家としての思索 〜」でも触れています。こうした当事者としての経験が、KYC制度のあり方や責任の明確化に関する本稿での提案へとつながっています。

加えて、本稿はGlobiance事件において、XDCをことさら擁護する意図も、対立する意図もありません。事件の責任を問われ、強く非難されるべき主体は、何よりもまずGlobiance自身であることは言うまでもありません。なお、訴訟の可能性も取り沙汰されていますが、本稿は法的手続きに資することを目的とするものではなく、むしろXDCネットワークの将来の制度設計や議論に資することを願って執筆しています。それが第二、第三の同様の事件を未然に防ぐことにつながると考えています。

あくまでも自らの被害体験を踏まえつつ、XDCに内在する構造的な課題を冷静に分析し、それが将来的な議論や制度設計の深化につながることを願って執筆しています。その大前提を踏まえつつ、以下に考察を展開していきます。


(付記)
本稿は公開済みですが、今後も誤字脱字の修正に加え、画像や内容の追加・加筆修正を適宜行っていく予定です。これは、本稿の内容を一層充実させ、読者にとってより有益なものとすることを目的としています。

本記事の構成

  1. Globiance事件の背景
  2. Globianceが選ばれた三つの理由とKYCの存在
  3. KYC必須がもたらした中央集権性と安心感
  4. KYC導入の狙いと金融機関との親和性
  5. Ritesh氏自身の発言から見えるXDCの方向性
  6. KYCの進化と分散化とのバランス
  7. Globiance事件が浮き彫りにした責任の種類
  8. KYCを契約に結びつける提案
  9. 結びに ― XDCと次の一歩へ

1. Globiance事件の背景

Globiance事件は、取引所Globianceが運営していたXDCマスターノードをめぐって、多くの投資家が資産を引き出せないという深刻な事態を引き起こしました。 この出来事は単なる一企業の経営問題にとどまらず、XDCエコシステム全体に大きな影響を及ぼし、コミュニティの信頼を揺るがすものとなりました。

この事件を理解するためには、まずXDCネットワークにおけるマスターノードの仕組みを押さえる必要があります。

XDCではマスターノード運営に1000万XDCのステークが必要とされており、この条件を満たした者だけがノード報酬を得られる仕組みです。多くの投資家は「Globianceがマスターノードを運営しているなら、そこに預ければ報酬を受け取れる」と理解し、その目的で資産を託したと考えられます。

Globianceの公式Xアカウントによれば、2022年12月22日の時点で、同社が稼働させていたマスターノードは50台に達していました。

https://x.com/globiance/status/1605844958367432704

さらにGlobianceの公式サイトでもレポートを公開しており、そこでは以下のように書かれています。

XDC Master Node staking has been a huge success up to date. Today 50 Globiance XDC Master Nodes are now fully-synced and LIVE. The shared staking model allows every XDC holder to participate in XDC Master Node staking whether they hold a thousand or a million XDC.

日本語訳
XDCマスターノード・ステーキングは、これまで大きな成功を収めてきました。本日、Globianceによる50台のXDCマスターノードが完全に同期し、稼働を開始しました。シェアード・ステーキング・モデルにより、XDCホルダーは保有量が1,000XDCであっても100万XDCであっても、誰でもXDCマスターノードのステーキングに参加することができます。

https://globiance.com/news/2022-the-year-in-review-at-globiance.html

そして私が調べたところ、2022年12月22日時点でXDC全体で1000万XDCをステークしたマスターノードは227台あったと考えられます。したがって、Globianceはネットワーク全体の約22%ものマスターノードを保有していたことになり、これが事実であるとすれば、非常に大規模なものでした。それだけ多くの投資家がGlobianceを信頼してXDCを預けていたことを意味します。

では、なぜXDC投資家たちはGlobianceをこれほどまでに信頼して資産を預けたのでしょうか。なぜGlobianceはここまで多くのXDCマスターノードを増やすことができたのでしょう。

2. Globianceが選ばれた三つの理由とKYCの存在

Globianceを投資家が選んだ背景には、大きく分けて三つの理由が考えられます。それは次の三点です。

Globianceが投資家に選ばれた理由

  1. XDCをステーキングできる取引所がGlobiance以外に存在しなかった点
  2. Globianceが「安全」と「保証」を強調した点
  3. XDCとGlobianceの結びつきが投資家に強い信頼感を与えた点


さらにこれら三つの理由を丁寧に見ていくと、その背後には次に示すようなXDCが抱える三つのガバナンス課題が複雑に絡み合っていたことが分かります。

XDCが抱える三つのガバナンス課題

  • 制度設計としてのガバナンス
  • 情報発信のガバナンス
  • 人物・権威を通じた信頼形成のガバナンス


では、具体的にどのような理由があったのかを順に見ていきましょう。

第一の理由

第一に、XDCをステーキングできる取引所が他に存在しなかったことです。XDC投資家は、取引所で購入して保有しているだけでは資産を増やすことができません。しかし、Globianceが顧客から預かったXDCでマスターノードを立て、そこから得られる報酬を分配する仕組みを提供したことで、「ただ保有するだけでは増えないXDCを活用できる手段」として、多くの投資家に強い魅力を与えました。

第二の理由

第二に、「安全」と「保証」を強調した点です。Globiance最大のアピールは、この「安全」と「保証」を掲げたことでした。これも投資家にとっては大きな魅力でしたが、実際にはGlobiance自身の謳い文句にすぎず、それ自体に信頼性を担保する力はありません。もっとも、Globianceは公式に「資金100%保証」や「規制遵守」を掲げており、これらの表現も投資家の安心感を大きく後押ししました。しかし後に、こうした保証が裏付けの不透明なものであったことが明らかになっています。

参考: Globiance Transparency


ここで投資家にとって決定的な判断材料となったのが、「XDCマスターノード運営には1000万XDCのステークとKYC提出が必須」という制度でした。Globianceがこの条件を満たしている事実は、「XDCに認められた正式な運営者」という印象を与え、それが「安心感」へと直結したのです。これは、

  • 制度設計としてのガバナンスの問題


になります。これについては後ほど詳細に見ていきましょう。

第三の理由

第三に、XDCとの結びつきが投資家に強い信頼感を与えたことです。Globianceは、XDC公式サイト(xinfin.org)のエコシステム紹介ページにおいて、Circularity Finance や XSwap と並び「DeFi/Trade Finance」のカテゴリで紹介されていました。そこでは「法定通貨と暗号資産をシームレスに統合する長期戦略に注力している」と説明されており、XDCネットワークの公式エコシステムの一員として公に位置づけられていたのです。これは、

  • 情報発信のガバナンスの問題


になります。もっとも現在では、このページからGlobianceの記載は削除されています。


さらに、XDC共同創始者であるRitesh Kakkad氏が、X(旧Twitter)上で繰り返しGlobianceの活動をリツイート・称賛していました。たとえば、GlobianceがXDC上でDEXを立ち上げた際には「Congratulations」と祝辞を述べ、またデザインコンテストの開催時には「Kudos to Globiance」と評価を与えるなど、具体的に後押しする発信を行っていました。これは、

  • 人物・権威を通じた信頼形成のガバナンスの問題


になります。

さらには、国際貿易フォーフェイティング協会(ITFA)フィンテック委員長として長年XDCを推進してきたAndré Casterman氏が、Globianceの経営メンバー(Chief Innovation Officer)として公式に紹介されていたことです。André氏はXDC投資家の間で信頼されてきた人物であり、その存在がGlobianceへの安心感をさらに強める要因となりました。こちらも「人物・権威を通じた信頼形成のガバナンスの問題」となります。

もっとも、ここで触れたXDCネットワークやRitesh氏、André Casterman氏に悪意があったわけではなく、むしろXDCエコシステムを広げるために一定のプロモーションや後押しを行ったと考えるのが自然で、当時は誰も今回のような事態を予想できなかったでしょう。問題は「意図」ではなく、結果として投資家に強い安心感と信頼感、そして信用性を与える構造が生まれてしまった点にあります。

ここで整理した三つのガバナンス課題のうち、情報発信や人物・権威を通じた側面については、この章での考察にとどめます。後の章では、特に制度設計としてのガバナンス、すなわちKYC必須制度の在り方を中心に掘り下げて検討していきます。

ここまでの三つの理由を踏まえると、Globianceがこれほど多くのマスターノードを集められたのは、単に高利回りを提示したからではありません。

XDCネットワークが独自に導入していたKYC制度に加え、公式サイトでの掲載、共同創始者Ritesh Kakkad氏による継続的な後押し、そしてITFAフィンテック委員長としてXDCを推進してきたAndré Casterman氏がGlobianceの経営メンバーに名を連ねていた事実など、公然たる関係性が重なっていました。

その結果、これらが投資家に強い安心感と正当性を与え、Globianceは単なる取引所以上に「安心できる存在」「信頼できる存在」として位置づけられ、多くのXDCが託される極めて重要な要因となったのです。

3. KYC必須がもたらした中央集権性と安心感

本来、Ethereum、Polygon、Avalancheといった多くのEVMチェーンでは、ノード運営にKYCは不要であり、誰でも自由にノードを立てられる「パーミッションレス(permissionless)」な仕組みが採用されています。そのため、ネットワーク上で生じた問題について「関与しない」というスタンスも、一定の合理性があると理解できます。

しかしXDCは、あえてKYCを必須条件とすることで、分散化よりも中央集権性を強める方向に舵を切りました。1000万XDCという高額なステークとKYC提出を必須条件としたことは、「誰がノードを運営できるか」を事実上XDCが管理・制限できる仕組みを意味します。現実的には、誰もが容易にノードを運営できるわけではなく、これらの条件によって運営者は強く選別されてきました。

さらに、チェーンの根幹であるマスターノード運営にKYCを課し、それを通過した者だけが報酬を得られる仕組みを整えたのは、他でもないXDCです。たとえ「KYCが形式的だった」との反論があったとしても、「KYC必須」と掲げていた事実そのものが、投資家に「XDCが審査している」という印象を与えました。そしてその印象が、「信頼できる相手に違いない」という投資家の安心感へとつながったのです。

その結果、多くの投資家がGlobianceにXDCを預けました。KYCの存在は「XDCが認めた事業者」という安心感を与えた要因の一つであり、もしそれがなければ投資家がより慎重になり、Globianceを避けていた可能性もあったでしょう。

もしXDCが「誰でも自由に参加できる中立的なネットワーク」を目指すのであれば、形式的にKYCを課すよりも、いっそ撤廃した方が理念と整合性が取れるでしょう。

しかし実際には、KYCを撤廃することは現実的に難しいと考えられます。それはなぜなのか。なぜXDCはKYCを撤廃することが容易ではないのか、そもそもなぜあえてKYCを導入したのか――その背景を探ってみたいと思います。

4. KYC導入の狙いと金融機関との親和性

XDCが他のブロックチェーンにはない形でKYCを必須として導入した背景には、当然ながら合理的な理由があったはずです。しかし、その理由を明確に示す公式ドキュメントは見当たらず、議論も十分に行われていません。以下は筆者の見解となりますが、 XDCがKYCを導入した狙いは次のように考えられます。


XDC(XinFin)の成り立ち

元来、XinFin(XDC Networkの開発元)は2017年に設立され、当初から「貿易金融(Trade Finance)と国際決済(International Payments)」を主なユースケースとして構想されたエンタープライズ向けブロックチェーンプロジェクトでした。パブリックチェーンとプライベートチェーンを組み合わせたハイブリッド構造を採用し、既存の銀行や決済ネットワーク、ERPなどのレガシーシステムとの互換性を重視してきました。

またXDCは、規制およびコンプライアンス要件を強く念頭に置いて設計され、次のような要素を含んでいました。

  • 国際金融メッセージ標準であるISO 20022への準拠
  • 資産のトークン化
  • 国際送金の効率化


このように、XDCは誕生の時点から「金融機関に受け入れられること」を強く意識したネットワークでした。したがって、ノード運営者を匿名のままにしておくのではなく、一定の実名性や法人格を伴う形で特定可能にすることは、自然な選択だったと言えるでしょう。

こうした背景を踏まえると、XDCがKYCを導入した理由の核心が浮かび上がってきます。

つまり、マスターノード運営者を「実名・法人登録」に基づいて特定することで、
金融機関に安心を与え、「匿名性の高いネットワーク」ではなく、規制当局に対しても透明性と説明責任を担保できるネットワークであることを狙ったのです。

(2025/10/02 追記:既存記事の発見・補足)
本稿公開後に追加調査を行ったところ、実はXDCチーム関係者の Vinn 氏 によって 2023年5月31日 に公開されていた記事 (Battle of the Blockchains — XRP (Ripple) vs. XDC (XDC Network): Uncovering the Benefits) が存在していたことに気づきました。

https://www.xdc.dev/vinn_9686/battle-of-the-blockchains-xrp-ripple-vs-xdc-xdc-network-uncovering-the-benefits-41oe

そこでは “KYC-enabled Masternodes” が「信頼とコンプライアンスの追加レイヤー」であると明言されており、企業や事業者が規制順守の下で安心してネットワークに参加できるようにすることを狙いとして掲げています。

これは本稿で述べてきた「XDCがKYCを導入した目的=金融機関や規制当局に対する安心感の提供」という分析を、公式言説として裏付けるものです。同時に、この「安心感」は投資家にも強く作用し、Globiance事件において過度の信頼が背景にあったことを説明する材料ともなります。

本稿公開時にはこの記事を把握していませんでしたが、今回の議論を補強する一次資料として重要だと判断し、追記として引用します。


金融インフラとの親和性を重視した歩み

実際、XDCは貿易金融や金融インフラとの親和性を高めるための取り組みを進めてきました。その具体例としては次のものが挙げられます。

  • 国際貿易フォーフェイティング協会(ITFA)との提携や
  • TradeTrustプラットフォームへの関与
  • Ellipticによるモニタリング対応
  • USDC統合
  • ISO20022準拠


こうした流れから見ても、「金融機関から見て、このネットワークは規制要件を満たしているように見える」という印象を与えることが狙いだったと考えるのは自然です。

また、XDCの成り立ちからして、既存の金融インフラとの融合を志向している以上、「完全分散化だけを理想として突き進む」という姿勢は現実的ではないと思われます。

同じ仮想通貨の中でも、金融機関との関係性を語る際によく引き合いに出されるのがXRPですが、しばしば中央集権的だと批判される一方で、金融機関との連携を進めやすいという特徴があります。 一方でEthereumのような完全分散型の形では、伝統金融との親和性を確保するのは難しいのが実情です。

実際に銀行口座を作る際にもKYCは世界的に必須ですし、そう考えると、XDCがKYCを取り入れたのは金融機関に安心感を与えるための自然な選択だったと考えられます。同時に、それは既存の金融インフラとの親和性を持たせ、ネットワーク全体を「規制に適合した基盤」として位置づける意図でもあったのでしょう。


投資家にまで広がった安心感

そして、これは極めて重要な点ですが、そのXDCが執行するKYCによる安心感を得たのは金融機関だけではありませんでした。

XDC投資家にとっても、XDCのKYCを通過したという事実は極めて大きな安心材料となっていたのです。とりわけ、多くの投資家がGlobianceにXDCを預けた主要な理由の一つは、この「XDCが与えている安心感」にあったと言えるでしょう。

XDCは主として金融機関に安心感を提供する意図を持っていたのかもしれませんが、実際には投資家もまたその安心感を強く抱く結果となっていたのです。

(2025/10/02 補足)
なお、XDCチーム関係者の Vinn 氏 による記事 Battle of the Blockchains — XRP (Ripple) vs. XDC (XDC Network): Uncovering the Benefits(2023年5月31日公開)には、「KYC-enabled Masternodes」を「信頼とコンプライアンスの追加レイヤー」と位置づける記述が見られます。これは本稿で述べてきた「金融機関に安心感を提供する目的」を裏付ける一次資料であり、同時に投資家が過度の安心感を抱くことにつながった構造を説明する補強材料にもなります。

次に、こうした推測を裏付けるように、XDC共同創始者のRitesh氏自身がKYC導入の背景や規制対応について述べた発言を紹介します。

5. Ritesh氏の発言から見えるXDCの方向性

XDC共同創始者のRitesh Kakkad氏は、XDCネットワークにKYCレイヤーを導入した背景やオンチェーン・スラッシング、さらには規制当局との関係について、2022年6月18日に開発者向け公式プラットフォーム XDC.dev に投稿された " XDC Network Protocol Upgrade Proposal: Fully Proof-of-Stake (PoS) Network " の中で言及しています。これは、XDCがいかに規制やコンプライアンスを意識し、金融機関との親和性を高めようとしているかを示す重要な手がかりです。

https://www.xdc.dev/riteshkakkad/xdc-network-protocol-upgrade-proposal-fully-proof-of-stake-pos-network-h50?utm_source=chatgpt.com

この投稿の中でRitesh氏は、以下の点について言及しています。

1. KYCレイヤーを導入した背景

As well, the XDC network added a KYC layer for its validators, which enabled the identification of masternodes/validators. With this unique feature, the XDC network successfully handled queries from different regulators that had issues with identity and KYC-related compliance requirements.
日本語訳
また、XDCネットワークはバリデーターに対してKYCレイヤーを導入し、マスターノード/バリデーターを特定できるようにしました。このユニークな仕組みによって、XDCネットワークは規制当局からの身元確認やKYC関連の要件に関する問い合わせに適切に対応することができました。

2. オンチェーン・スラッシングとKYC違反時の罰則

For on-chain slashing, validators that engage in equivocation---the process of signing-off two blocks with the same step---trigger the process. Particularly, when a validator node keys in the wrong KYC details, the contract includes a reportMalicious method. If more than 2/3 of the validators agree on a reportMalicious, an on-chain slashing is executed. This process can burn up to 100% of a validator’s stake. 日本語訳 オンチェーン・スラッシングについては、同じステップで2つのブロックに署名する(二重署名/矛盾署名)行為を行ったバリデーターがその対象となります。特に、バリデーターノードが誤ったKYC情報を入力した場合、コントラクトには reportMalicious(不正報告)メソッドが組み込まれています。バリデーターの3分の2以上が reportMalicious に同意すると、オンチェーンでスラッシングが実行され、このプロセスではバリデーターのステークが全額没収される可能性があります。

3. 規制当局との関わりや国際標準への対応

Answer to Question 3: BIS, FAFT, AML and KYC etc comes whenever we speak to the regulators. But many countries came out with various rulebooks and proposed framework (very opposite to each other) so it’s also important to aligen with most of the countries and not stick to one specific country. ITFA, D2A2, DLT.mobi all discussion related to compliance, AML, FAFT and regulation. Limited community members aware about XDC's founders are part of new digital negotiable instrument law initiative. XDC Network so far most regulators friendly network and we want to keep enhancing as per the revised rule books. Other important task is to see technical viability as well so this may need extensive communication and brainstorming with developer’s community as well. Also i asked to specific link as IMF came with many papers including CBDC, Risk with crypto trading, crypto risk to emerging counties, crypto mining and energy consumption, financial system risk etc. 日本語訳 質問3への回答:規制当局と話をする際には、BIS(国際決済銀行)、FATF(金融活動作業部会)、AML(マネーロンダリング防止)、KYCなどの議題が必ず出てきます。しかし、多くの国々がそれぞれ異なる(時には正反対の)ルールブックや提案フレームワークを出しているため、特定の国だけに従うのではなく、できるだけ多くの国々と整合性を取ることが重要です。ITFA、D2A2、DLT.mobi などでは、コンプライアンス、AML、FATF、規制に関する議論が行われています。また、XDCの創設者が新しいデジタル交渉可能証書法のイニシアチブに関わっていることを知るコミュニティメンバーは限られています。XDCネットワークはこれまでのところ、規制当局に最もフレンドリーなネットワークであり、今後も改定されるルールブックに応じて改善を続けていきたいと考えています。もう一つ重要な課題は技術的な実現可能性を検証することであり、そのためには開発者コミュニティとの継続的なコミュニケーションやブレインストーミングが必要になるでしょう。また、私は具体的なリンクを求めましたが、IMFはCBDC(中央銀行デジタル通貨)、暗号資産取引のリスク、新興国への暗号資産リスク、暗号資産マイニングとエネルギー消費、金融システムへのリスクなど、多くの論文を出しています。


規制・金融機関を意識した設計思想

これらの発言からは、XDCがいかに規制やコンプライアンスを重視し、既存の金融インフラとの親和性を高めようとしているかが見えてきます。単なる技術的な選択ではなく、金融機関や規制当局への対応を強く意識した設計思想が垣間見えます。

さらに重要なのは、こうした仕組みが投資家に対しても「XDCは規制要件を考慮した安全なネットワークである」という印象を与えた点です。すなわち、この設計は規制当局に対する説明責任を果たすだけでなく、金融機関との協業や投資家からの信頼獲得にも直結していたと評価できます。

XDCはKYC必須によって参入が進むように、主として金融機関向けに安心を提供したかったのかもしれません。しかし実際には、投資家もまた「XDCが行うマスターノードKYC」によって過度の安心感を抱く結果となり、XDCは金融機関向けの安心感を意識していたものの、投資家がそこまで信用を抱いてしまうことを想定していなかったかもしれません。だとすれば、まさにその点こそが、「ガバナンスが不十分であった」との批判が生み出される要因の一つになるであろうと考えられます。

そして、その「不十分なガバナンス」が最も深刻な形で現れたのが、他ならぬGlobiance事件でした。

(追記)

xdc.devに

https://www.xdc.dev/vinn_9686/battle-of-the-blockchains-xrp-ripple-vs-xdc-xdc-network-uncovering-the-benefits-41oe

6. KYCの進化と分散化とのバランス

Globiance事件が突きつけた現実

XDCがKYCを通過させた取引所であることを理由に、多くの投資家が安心して資産を預けました。しかし2024年秋頃から、資産を引き出せない状態が相次いで発生し、深刻な不安や不信感、そして損失リスクを抱える事態となったのです。

Globianceへの批判は当然のことですが、矛先はやがてXDCそのものにも向かいました。なぜなら、Globianceが投資家に与えていた「安全」「正当性」の印象は、単に取引所自身の主張ではなく、XDCが課したKYC制度や公式サイトでの紹介、共同創始者による後押しなどによって強化されていたからです。

投資家から見れば「XDCが認めた事業者だから信頼できる」という構図が成り立っていたため、その信頼が裏切られたと感じた瞬間、XDCにも責任があるのではないかという感情が噴き出すのは自然な流れでした。

完全に分散型のネットワークであれば、運営主体が投資家の判断に介入する余地はなく、こうした批判がXDCにまで及ぶことはなかったかもしれません。しかし、あえてKYCを必須とした中央集権的な設計を採用していたからこそ、投資家は「XDCが保証している」という安心感を抱き、その結果、問題発生時にはXDCもまた批判の対象となったのです。

この点こそが、XDCが「金融機関との親和性」を重視してKYCを導入してきた方針と、分散型ネットワークに期待される「自己責任原則」との間に生じた根本的なギャップだったとも言えるでしょう。


KYCをどう進化させるか

今後の議論の焦点は「KYCをそもそも必要とするかどうか」だと思います。しかし、XDCの成り立ちと、規制や金融機関との親和性を重視してKYCを導入してきた経緯を踏まえれば、KYCを完全に撤廃するのは現実的ではなく、その是非については慎重な検討が必要だと思われます。

むしろ今は、KYCを「進化」させるべき時期に来ていると考えられます。KYC必須という方向性そのものは理解できますし、それが利点であり強みでもあります。ただ、そのガバナンスは十分ではなく、そこから多くの批判が生まれてきたのも事実です。KYCを導入する以上、XDCには責任が伴うと考えるのは当然の帰結でしょう。

考えるべきは、その中身や更新規定、見直しの仕組みです。具体的には、次のような仕組みが求められるのではないでしょうか。

  • KYC基準の引き上げ
  • 国際的に認められた専門のKYCベンダーへの外部委託(アウトソーシング)
    • ゼロ知識証明(ZK Proof)を活用したKYCの導入によるプライバシー保護と透明性の両立
  • 定期的なRe-KYC(再審査)の導入
  • 取引所やカストディ型ノード運営者に対する台数制限の明確化
  • 各ノードにおけるステークとアンステークの透明化


なお、これらの方向性については、XDC共同創始者の Atul Khekade 氏 も「専門のKYCベンダーによる外部委託とゼロ知識証明(ZK Proof)の活用」を提案しており(コメント)、Anil Chinchawale 氏 も同様にプライバシー保護と透明性を両立させる技術的展望を示しています(コメント)。さらに、Arturo Cantera Carrasco 氏 も「KYCはもはや外部委託すべき時期に来ている」と指摘しており(記事)、こうした外部委託やZK Proof導入の方向性は、すでにコミュニティ内でも具体的に議論が始まっているのです。

ここでは参考としてスクリーンショットを貼り付けていますが、日本語訳は付けていませんので、必要に応じてリンク先をご覧いただき、ブラウザの翻訳機能などで確認してください。

https://www.xdc.dev/akhekade/comment/599?utm_source=chatgpt.com
https://www.xdc.dev/anilchinchawale/comment/5ai?utm_source=chatgpt.com
https://www.xdc.dev/xcantera/update-request-of-masternode-interface-5367?utm_source=chatgpt.com


責任の制度化へに向けて

特に、次の二つのケースを区別することが重要です。

  • 通常の個人や法人が自己資金で1000万XDCをステークする場合
  • 取引所が顧客から預かった資産をまとめてステークする場合


この二つでは、そのリスクの性質は根本的に異なります。

取引所がノードを運営する場合、顧客資産が流用されるリスクが高まり、破綻や不正が発生すれば被害は広範に及ぶ可能性があります。そして多くの顧客は「XDCがKYCを通した取引所なら安心だろう」と信じてしまう傾向があります。したがって、取引所やカストディ型ノード運営者に対しては、より厳格な審査と継続的なモニタリングが不可欠です。

言い換えれば、XDCが目指す方向性を実現させるためには、分散化と中央集権化の境界をどこに引くのか、そしてその責任の所在をどう明確にするのかが、今後の成長にとって極めて重要な論点になるように思います。

だからこそ、次に述べる「契約によって責任を明文化し、違反時には制裁や救済が確実に機能する制度的な仕組み」を検討すべきでしょう。すなわち、口約束ではなく、法的・制度的に拘束力のある形でXDCやノード運営者の責任を明確化する方向性が望ましいと考えられます。

この観点から、次にGlobiance事件を振り返り、そこで浮き彫りになった責任の種類を整理してみたいと思います。

7. Globiance事件が浮き彫りにした責任の種類

これまで見てきたように、KYCの不十分なガバナンスは投資家の過度な安心感を招き、Globiance事件という形で深刻な結果をもたらしました。では、こうした状況においてXDCにはどのような責任が生じるのでしょうか。


XDCに問われる責任

具体的には、KYCを実施する以上、少なくとも以下の三つの責任が問われる可能性があります。

  • 審査責任:適切な基準で事業者を通過させること
  • 説明責任:どの基準・過程で審査したかを明らかにすること
  • コンプライアンス対応責任:不正発覚時に規制当局等や調査機関と協力すること

また、今回のGlobianceの悲劇のようにKYCを通過した取引所に人々が信頼してXDCを預け、その結果損害を被ったのであれば、

  • 道義的責任:利用者を安心させた以上、その結果に一定の責任を負うこと


も無視できない責任となりえます。

XDCにとっては、法的には限定的な責任しか問われないとしても、透明な説明、再発防止策、救済の仕組みの検討の提示は、信頼回復のために不可欠かもしれません。


投資家に与えた安心感と責任

ここからは筆者の見解です。XDCネットワーク上で起きたことは、大原則としてそのプラットフォーム側の責任に帰するべきだと考えています。ブロックチェーンは本来「分散化」を旨とし、各参加者が自己責任で行動する仕組みであり、その自律性こそが多くの支持を集めてきた理由でもあります。ネットワークが特定の管理者を持たないからこそ、自由でオープンな経済圏を形成でき、中央集権的なリスクから解放される──これは分散型ネットワークの大きな魅力であり、理想でもあります。

しかし、XDCはマスターノードにKYCを課すことで、あえて中央集権的な要素を取り込んできました。その結果、投資家は「XDCが保証している」という安心感を抱きやすい構造となり、完全分散型のネットワークとは性質が異なっているのです。この中央集権的な設計を考慮すると、今回XDC側が責任を問われるとすれば、マスターノードのKYCに関する部分でしょう。

さらに、Globianceとパートナーシップを結んでいた事実に加え、共同創始者のRitesh氏がGlobianceの活動事例をX(旧Twitter)で繰り返しリツイートしていたこと、公式サイトでの掲載、そして国際貿易フォーフェイティング協会(ITFA)フィンテック委員長としてXDCを推進してきたAndré Casterman氏がGlobianceの経営メンバーに名を連ねていたことも、投資家に強い安心感を与えました。

これらの要素が重なった結果、Globianceは単なる取引所以上に「信頼できる存在」として位置づけられ、多くのXDCが託される大きな要因となったのです。

この一連の経緯を踏まえると「XDCには一切の責任がない」とは言い切れず、中央集権的な仕組みを採用している以上、一定の責任が伴うのは自然な帰結だと考えられます。 現状でも、第二、第三の同様の問題が発生するリスクは残されています。マスターノードKYCは当初、主として金融機関との親和性を意識して導入された面があったと考えられますが、結果的には投資家にも過度な安心を与える構造となり、Globiance事件を引き起こす下地を作りました。そういう意味で、その実効性にはなお課題があったように思われます。


今後の課題と制度化の必要性

現行のKYCは一定の役割を果たしてきたものの、形式的な確認にとどまる限り、依然として抜け穴や悪用の余地を残しています。そのため、このGlobiance事件を教訓とし、また先延ばしにすべきではない課題として捉え、今後は「KYCを進化させる」方向へと具体的に踏み出す必要があるのです。国際的に認められた専門のKYCベンダーへの外部委託やゼロ知識証明(ZK Proof)、定期的なRe-KYCといった仕組みを取り入れることで、真に実効性ある制度へと高めていけるでしょう。

さらに、仮に反社会的勢力や犯罪組織がペーパーカンパニーを設立、あるいは既存企業を買収してKYCを突破した場合でも、実際にはマスターノード運営が可能になる恐れがあります。そのような主体が利益を得ていた場合、XDCは規制対応を取るのか、それとも「関与しない」立場を貫くのか──金融インフラとの親和性を重視してきた歩みを考えると、ここは曖昧にできない論点です。実際、先に触れたようにXDC共同創始者のRitesh氏自身も「規制当局と話をする際には、AML(マネーロンダリング防止)、KYCといった議題は必ず出てくる」と述べています。

こうした課題を解決するためには、KYCを単なる身元確認で終わらせるのではなく、より強制力を伴う制度と結びつけることが求められます。その具体的な方策の一つが「契約」の導入です。

8. KYCを契約に結びつける提案

今後、KYC時に契約書を組み込む仕組みを導入することが、課題解決のための有効な方向性の一つになり得るでしょう。契約書を交わすことでノード運営者の義務や責任範囲、違反時の制裁を明文化し、KYCの実効性を大幅に高めることが可能になります。

本稿では、提案を二段階に分けて整理します。第一の提案は「契約をKYCに組み込む」という基本的な枠組み、第二の提案はそこからさらに一歩進めて「ユーザー保護を担保する仕組み」として発展させるものです。

具体的には、契約を導入することで次のような効果が期待できます。


提案1(基本):契約をKYCに組み込む

第一に、責任範囲を明確化できる点です。ノード運営者が不正行為を行った場合の責任、そしてXDCチームがどこまで対応するのかの範囲を、双方が法的拘束力のある文面で共有できます。

第二に、規制準拠の強化につながります。反マネーロンダリング(AML)やテロ資金供与防止(CFT)への対応を契約条項に盛り込むことで、各国当局に対し「形式的なKYCにとどまらず、責任を伴う仕組みを整備している」と説明できます。

第三に、違反時の制裁手段を明文化できる点です。ノード停止、ステーク没収、損害賠償請求などを契約に含めておけば、Globianceのようなケースが発生した際にも「契約違反」として法的に追及しやすくなります。

まとめると、契約をKYCに組み込むことで、その実効性は大きく高まります。単なる身元確認にとどまらず、ノード運営者とXDC双方が具体的な義務と責任を共有し、違反時には明確な対応をとれる仕組みが整います。これにより、Globiance事件のような不透明さや曖昧さを残すことなく、投資家に対しても「安全が担保されている」という強いメッセージを示せるでしょう。


提案2(発展):ユーザー保護を担保する仕組み

加えて、特に取引所やカストディ型ノードにおいては、ユーザー保護を確保する意義が一層強まります。顧客資産を利用する際の責任範囲を契約上で明示することで、ユーザーに「一定の保護がある」という安心感を与えることができます。

さらに重要なのは、契約によって利用者保護の仕組みを制度として組み込める点です。 たとえば、取引所が顧客資産をステークに流用する場合、その運用方針や資産分離のルールを契約条項で義務付けることが可能です。また、万一の破綻時に備えた補償制度や返還義務を明文化しておけば、利用者は「すべてが自己責任」という曖昧な状態から脱却できます。

具体的には、以下のような条項が考えられます。

補償制度(資産保護の仕組み)

  • 資産分離義務:顧客資産と運営者資産を厳格に分けて管理する。
  • 補償基金:不正や破綻時に最低限の補填を行う仕組みを設ける。
    • 例えば、マスターノード報酬の一部をスマートコントラクトにより自動的に積み立てる仕組みも想定できます。これにより基金残高はオンチェーンで透明化され、利用者は「どれだけ補償が確保されているか」を常に確認できるようになります。
  • 返還優先条項:万一の清算時に顧客資産を最優先で返還することを義務付ける。


「保障制度」は分散型金融(DeFi)の大きな壁を取り払う可能性を秘めています。これまでのDeFiは「透明性」と「自己責任」を長所としてきましたが、同時にそれが短所ともなり、利用者は常に「ハッキングや運営破綻のリスクをすべて自己責任で負わなければならない」という不安を抱えてきました。その不安こそが、従来金融の投資家や企業にとって参入の障壁となってきたのです。もしスマートコントラクトを活用した制度として補償基金や資産分離のルールが組み込まれれば、利用者の安心感は格段に高まり、参加者の裾野も広がるでしょう。すなわち、「コードがルール」から「コード+契約がルール」へと進化することで、より多くの人々が受け入れやすい環境が整うことでしょう。

ここでよく理解しておかなければならないのは、どれほど精緻に制度を設計しても完璧なガバナンスは存在しないということです。想定外の事態や人間の悪意を完全に防ぐことはできない以上、契約による義務と責任の明確化に加えて、万一に備えた補償制度を組み合わせることが不可欠です。これは、ガバナンスの限界を補完し、投資家に「最悪の事態でも一定の保護がある」という安心感を提供する役割を担います。すなわち、「ガバナンス+補償制度」こそが、XDCエコシステムをより信頼されるネットワークへと発展させ、持続的成長を支える鍵になるのではないでしょうか。

もっとも、ブロックチェーンは本来「自己責任」「コードがルール」という原則に立脚しており、伝統金融のような包括的な保護策をすべて持ち込むのは違和感があります。しかしながら、XDCはその成り立ちから完全分散型というより「準・金融インフラ寄り」であり、中央集権的要素を持ち合わせたネットワークです。だからこそ投資家も「XDCがKYCしているなら安心だ」と感じやすかったとも言えるでしょう。

したがって、過度に介入しすぎない範囲であっても、契約によるユーザー保護の骨格を明示することは現実的かつ必要な対応だと考えられます。こうした「ユーザー保護を前提にした契約」は、従来型の金融と同等レベルの安心感を補完的に提供し、投資家が過度に不安を抱くことなくネットワークに参加できる土台を築くでしょう。

もちろん、これらはあくまで一つの提案にすぎません。最終的にどのような仕組みを整えるかは、コミュニティ全体での議論と合意形成が不可欠です。 その意味で、今こそXDCの運営側、金融機関、マスターノード運営者、そして一般投資家がそれぞれの立場から課題と向き合い、次の一歩を模索すべき時期に来ているといえるでしょう。

9. 結びに ― XDCと次の一歩へ

Globianceの悲劇的な事件は非常に痛ましく残念な出来事でしたが、これは単なる一取引所の問題にとどまらず、XDCにおけるKYC・分散化・信頼・責任の在り方という根本的な課題を浮き彫りにしていると感じています。

本稿の趣旨は、XDCと対立する意図をまったく持たず、むしろ共に解決策を模索し、より強固で持続可能なエコシステムを築いていくことにあります。今こそ、Atul氏やRitesh氏を含め、コミュニティ全体でこれらの課題について率直かつ建設的に議論し、具体的な解決策を模索していく好機だと筆者は考えます。その歩みが、XDCをより信頼されるネットワークへと成長させる礎になるはずです。

XDCに関心を持つ方々の間でも、この問題について意見や考えを共有していただければ幸いです。

最後に、このような議論に耳を傾けてくださる皆さん、そしてXDCエコシステムの発展に日々尽力されている関係者や開発者の方々、さらにはリスクを負いながらも支えてくださっている投資家の皆さんに、心より感謝申し上げます。

加えて、Globiance事件によって大きな傷を負いながらも、諦めることなく声をあげ続けている方々、実際にトランザクションを精査し真実を明らかにしようとしてくださっている方々、そして被害者を支え合いながら援助やサポートを惜しまない方々にも、深い敬意と感謝を捧げます。

そして何よりも、Globianceに預けられている膨大なXDCが、一日も早く正当に投資家の手元へと戻ることを、心から願っています。Globiance側は「返金は進めている」と表明していますが、具体的な証拠やトランザクションの提示は乏しく、依然として多くの投資家が資産を引き出せない状態にあります。

Globiance事件は、いまも多くの投資家にとって現在進行形の問題です。XDCとしても調査や再発防止に向けた姿勢を明確に示すことが、投資家・コミュニティ双方の信頼回復につながるはずだと考えます。

私自身、この事件を通じて、ブロックチェーンにおける「分散化」と「規制順守」のバランスがいかに難しい課題であるかも改めて浮き彫りになったと感じています。もちろん、投資における最終的な判断と責任は、常に各自が負うべきものです。その原則を踏まえつつ、Globiance事件から得られる教訓を今後に活かすことが重要だと考えます。

この出来事を一つの転機とし、XDCと共に次の一歩へ。

11ppm

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Acknowledgements

The cover image for this article was created by the talented CoinCow, and I’m truly grateful for his creative ideas and skills. If you’re looking for impressive designs or graphics, be sure to check out his work at linktr.ee/coincowart. His creations are exceptional!